東南アジアサッカーのリアルな実情
ここではシンガポール以外の東南アジア各国の試合を実際に見て感じた(完全に梶原吉広の主観ですが)この地域のサッカーのリアルをお伝えします。
■東南アジアサッカーの祭典・AFFチャンピオンシップ
東南アジアのサッカーを語るうえで欠かせない大会が「AFFチャンピオンシップ」です。
ASEAN Football Federation(東南アジアサッカー連盟)が主催するこの大会は、通称「スズキカップ」として長く親しまれてきましたが、スポンサー変更に伴い現在はミツビシ電機カップの名称で開催されています。
2年に1度行われる東南アジア最大のサッカー大会で、参加国はASEAN加盟国を中心とした10か国前後です。各国の代表が一堂に会するこの大会は、期間中は地域全体が熱狂する一大イベントとなっており、私自身、シンガポール大会を現地で観戦したことがあります。
(おそらく日本だとE-1選手権にあたると思います)

■各国リーグの実力と成長〜タイ・ベトナム・インドネシアを中心に
現在の東南アジアで最も強いと評されているのがタイです。
国内リーグ「タイリーグ1」の整備が進み、外国人選手の獲得と育成体制の強化によってレベルが着実に向上しています。
近年ではJリーグやヨーロッパのリーグに挑戦するタイ人選手も現れており、その成長ぶりは目覚ましいものがあります。
一方で急激な成長を遂げているのがベトナムです。AFFチャンピオンシップでの好成績や若手選手の台頭が続いており、東南アジアの新たな強豪として確固たる地位を築きつつあります。両国の試合をテレビと現地観戦の両方で追って、その実力向上を肌で感じています。
人口2億7,000万人を超えるインドネシアは、東南アジアで最もサッカー熱が高い国のひとつです。
国内リーグ「リーガ1」の規模と観客動員数は東南アジア随一で、スタジアムを埋め尽くすサポーターの熱気は圧巻です。
フィリピンはバスケットボールが国民的スポーツとして知られていますが、近年はサッカーへの関心も急速に高まっており、代表チームはAFF大会でも存在感を示しています。
マレーシアは隣国シンガポールと旧Sリーグで同じリーグに参加していた歴史を持ち、国内リーグは一定の競技水準を維持しています。また近年ではカンボジアやミャンマーなど、より小さな国々でもサッカーリーグの整備が進んでおり、東南アジア全体がサッカーで盛り上がっていることを実感します。
■スタジアムを揺らすサポーターの熱量
東南アジアのサッカーで最も驚かされるのは、サポーターの熱量です。
日本のスタジアムとは異なる独特のエネルギーがあり、声援の大きさやコレオグラフィーの迫力は一度体験すると忘れられません。
特にインドネシアの試合はサポーターの熱狂度が世界基準で語られるほどで、スタジアム全体が一体となる瞬間は鳥肌が立ちます。
タイやベトナムの試合でも若い世代を中心に情熱的な応援文化が根付いており、東南アジアのサッカー観戦は単なる試合鑑賞を超えた体験となっています。
■日本との繋がりと東南アジアサッカーの今後
東南アジアのサッカーと日本の関係も近年深まっています。
タイリーグには複数の日本人選手が在籍しており、現地で試合を観戦すると日本人選手の活躍を直接目にする機会があります。
またクラブ単位はもちろん、Jリーグがリーグとして東南アジアのリーグとパートナーシップ協定を結ぶケースも増えており、選手の交流や育成ノウハウの共有が進んでいます。私はシンガポールを拠点に、日本と東南アジアのサッカーの繋がりをリアルタイムで追うことができる環境に幸運を感じています。
各国リーグの成長とともに、課題も見えてきます。一部のクラブでは経営の不安定さや選手への給与未払いが報告されており、プロリーグとしての基盤づくりはまだ発展途上の国も少なくありません。
(日本ではありえないでしょう)
育成年代の環境整備も大きな課題で、才能ある若手選手が適切な指導を受けられる体制が整っていないケースも見受けられます。
また人気クラブへの観客集中によりリーグ全体の底上げが進みにくいという構造的な問題も指摘されています。こうした課題を抱えながらも、各国サッカー協会はリーグ改革や育成強化に少しずつ取り組んでいます。
ポジティブな変化として、OTTプラットフォームやSNSの普及により東南アジアのサッカーが世界に発信される機会が飛躍的に増えています。
スポンサーシップや放映権収入も徐々に増加しており、クラブの財政基盤が少しずつ安定しつつあります。欧州や東アジアのクラブが東南アジア市場に着目するようになったことで、優秀な選手の海外移籍も増えてきました。日本のJリーグでも東南アジア出身選手の獲得が増えており、互いの市場が近づいてきていることを日々のニュースから実感しています。
まだ発展途上の部分は多いですが、そこに東南アジアサッカーの面白さがあると感じています。
完成されたリーグよりも、成長の過程にあるリーグのほうがダイナミックで見ていて飽きません。機会があれば近隣諸国の試合を観戦しに出かけるのが、シンガポール生活の楽しみのひとつです。
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